伊吹翼と「泣き空、のち」

 さる11月30日、ソロシリーズ「M@STER SPARKLE2」が52人分完走しました。めでたい。

 どれも良い曲なのはもちろん、アイドルによっては新たなジャンルの曲にも挑戦していたりして。1月のライブが楽しみなところであります。

 

 その完走を祝して、とあるサーバーのdiscordにて『MS2の好きな曲語る会』的なのが開催されました。いろんな意見が聞けてめちゃくちゃ楽しかったんですが、如何せん自分の用意した資料は発表時間である5分に到底収まるものではなく……。

 自分としてもまだまだ語り足りない!と思いましたので、ここで発散していきたいなと思います。

 

 曲は、伊吹翼で「泣き空、のち」。

 自分は翼の担当ではないんですが、MS2の中でも1,2を争うレベルで好きです。下手したら担当曲より好きです。

 

 

1 基本情報

 まずは軽く「泣き空」の情報から。

 

 「M@STER SPARKLE2 06」に収録されています。

(ちなみに関係ない話ですが、このCD自体がめちゃくちゃ良いです。楽しい曲、かっこいい曲、おしゃれな曲……全部名曲です。自分はMS2内どころか、歴代のソロCDで一番好きかも)

 作詞に「恋のLesson初級編」「Marionetteは眠らない」などに携わったこだまさおりさん、作曲にこちらはミリオン初めての清水哲平さんを迎えております。

 1曲目書いた人がまた戻ってきて4曲目書いてくれるってだけで色々感情が湧き上がりますね。清水氏は、有名どころだとAKB48より「365日の紙飛行機」などに関わっているそうです。

 

2 ここがイイ!

 続いて、好きなポイントをまばらに綴っていきます。文脈も何もあったものではありませんがご愛嬌。

 

⑴翼には珍しいバラード系ソング

 翼のソロ曲、と言えば3曲目の「ロケットスター」が自分は思い浮かびます。もちろん「恋レス」「Bmc」などもありますが、いずれにせよ翼のソロ曲のイメージは

  明るい・元気 or カッコいい

のどちらかに絞られていくのではないかと。ユニット曲も割とそんな感じですね。

 そういうところで、今回のようなガッツリしたバラードソングは、翼にとって大きな挑戦であると同時に、翼の新しい可能性を切り開いたなぁと感じました。

 

⑵印象に残りやすいイントロ

 楽器には全然詳しくないので、演奏などについて詳しく語るのは憚られますが……。

 ピアノの和音と笛の音だけで描かれるイントロは、そのシンプルさゆえに引き込まれます。特に笛は、曲中でもかなり印象的な使い方をされていて、次項で話すことと併せて曲の軽やかさの演出に一役買っています。

 

⑶翼の明るく楽しい歌声

 ⑴で話した通りこの曲はバラードでちょっともの悲しくもありますが、一方で翼の歌い方は普段の軽やかな調子を保っており、聞いていて心が重くなる感じはありません。むしろ楽しいとすら思うかもしれない。

 そのため、いわゆる「普段聞き」というやつで流れてきても苦じゃないなぁというのは結構な推しポイントです。

 

⑷歌詞の対比が綺麗

 この項については、めちゃくちゃ内容が多いです。なのでもう少し大きいところで説明しようと思います。

 

3 歌詞

 この曲、何といっても歌詞がめちゃくちゃ良い、というか綺麗なんです。

 「MS2 06」のジャケットイラストは芸術モチーフでしたが、まさに芸術的な歌詞なんです。

 

 初めに抑えておきたいポイントとして、タイトルにも登場する『空』という言葉。

 歌詞を読み解いていくと、これは「伊吹翼の心」の象徴なのではないか、ということに気付きます。まぁ本心と言ったほうが意味として適切なんですけど、ともかくそういうものです。

 でもそうしたとき、躓くものがあるんですよね。

 この曲、歌詞にすでに「ココロ」が入ってるんです。

 空が翼の心の象徴・比喩なら、このココロは一体なんなん……?と、紬でなくてもそう疑問に思うわけです。

 恐らくですが、ココロは逆に表面へ表れる彼女の気持ちであり、空の示す心こそが奥深くに眠る彼女の気持ちなのではないでしょうか。対象をあえてカタカナで表記することで本来の対象よりも形式的なものへ近づける……みたいな効果を意図したものに思えます。

 といった感じで、この曲では「空」と「ココロ」の二本柱で伊吹翼を描いていく歌詞になっています。

 

 続いて、先ほど⑷としてあげた歌詞の対比に注目していきます。

 全体を大きく見ると、この曲は1番サビで「昨日」2番サビで「今日」ラスサビで「明日」を描いているんだということが、それぞれのサビ前Bメロの歌詞でわかります。

 もちろん昨日だ明日だと言っても厳密に日が変わるような話でなくて、これもまた喩えですね。

 今日、というのがつまりタイトルにもなっている「泣いた後」を意味して、昨日と明日はそこから少しずらした時間軸に当たります。

 上はサビ歌詞と、それぞれの時間軸を併せて書いたやつになります。

 というわけで時間軸を踏まえてサビの歌詞を見ていくと、露骨に1番サビとラスサビが被ってますよね。「吹き込む綺麗な風」、「駆け出してくココロは〜」、「強がり」など共通する言葉ばかりなんです。

 ここで抑えておきたい点は二つです。

 一つは、「昨日と明日は似ているけどちょっと違う」こと。もう一つは「昨日と明日が似ている」ことです。

  え? 示す順番おかしくない?

とは自分でも思いますが、逆に言えばこれが妥当になるからこの曲は美しいんです。

 

 さて、一つ目についてですが、「昨日と明日は似ているけどちょっと違う」となった時、ではなぜ違うのか?その違いはどこから生じたのか?という話になりますよね。

 で、それは当然、今日を経験したかどうかです。今日というのは例えでしたから、言い換えれば「泣いた後」を経験したかどうかです。

 すると次に疑問が湧くのは、じゃあそもそも「泣いた後」って何?です。

 

 少し話題はずれますが、伊吹翼にとって涙を流すことはどんな意味があるのかについて考えてみましょう。

 翼の涙といえばあの最強のイベントコミュ「DIAMOND JOKER」が思い出されますが、あのコミュで翼は、自分のリーダー的能力の限界を知って涙をこぼしています(自分はそう解釈してます)。

 それ以外でも、翼は元々、モテモテハッピーライフに憧れる女の子でした。辛いレッスンはしたくない、楽しいことだけやっていたい……そんな彼女にとって涙は、モテモテハッピーライフと真逆のところにあるはずです。

 ということを考えると、翼にとって涙を流すことは相当マイナスであり、自分の中にないものを受け入れる、あるいは自分の中に何かがないという事実そのものを受け入れる行為に当たります。

 

 そして翼にとって涙がそういった意味合いを持つならば、その涙を流した後の「今日」は、自分の中になかったものを受け入れるタイミングになるでしょう。その瞬間、モテモテハッピーライフを目指していた伊吹翼からは離れ、別の何かへ向かう伊吹翼へと変わってしまいます。

 結果、モテモテハッピーライフを目指していた「昨日」は、全然違う道へ歩き始めた「今日」によって、どこか変わった「明日」へ繋がっていく……というのが一つ目の「昨日と明日はちょっと違う」ことの意味合いです。

 

 でもここで大事になってくるのが、二つ目の「昨日と明日が似ている」ことです。

 似ている、というのはつまり、明日の伊吹翼はモテモテハッピーライフを目指す伊吹翼ではないのか?と僕は考えます。

 正直ここの部分は明らかな根拠があるわけじゃないんですが、1番サビとラスサビが相当に似ているのは、やはりこの面を出したいからではないかと。

 確かに今日、涙を流した後の伊吹翼は普段の彼女と違う道を歩くのかもしれません。

 しかし明日にはまた、モテモテハッピーライフを目指して元の道を歩き始めます。涙を経験して一回り成長しながら、また最初の夢へ向かって進んでいくのです。

 

 これ、めちゃくちゃ美しくないですか?

 昨日、今日、明日っていう対比だけなら割と見る感じしますが、今日から見た昨日と明日は似てるけどちょっと違くて、その違いは今日を経験したかどうかで……という流れに持っていくのは初めて見たぐらいかもしれません。

 そしてその中にも「空」と「ココロ」の対比があるとかで、すごく整理された対比だなって感じます。

 他にもメッセージとして、サビラストの歌詞が「強がり→前向き→強がり」になっているあたり、翼の強がり=表面である「ココロ」を認めている曲なんですよね。元々僕が翼のことを知らなかったからかもしれませんが、伊吹翼の見方がガラッと、いやガラガラガラッと変わりました。

 実を言うと、個人的に翼の見方が大幅に変わったのはこれで2回目なんです。1回目は「LTD04」のボイスドラマ。あっちはどちらかといえば「伊吹翼を取り巻く環境」についてビックリした感じですが、今回は完全に伊吹翼という少女のイメージが変わりました。最初の方にも言いましたけれど、まさしく挑戦であり、新たな可能性の曲なんです。

 

4 まとめ

 「泣き空、のち」は、翼の涙と心と成長を描いた超良曲です。そして重すぎず聴きやすい、楽しい曲でもあります。

 翼のPではありませんが、今回のような曲を作ってくれたことには感謝しかないです。運営さん本当にありがとうございます。

 そしてもちろん、この曲はここでは終わりません。

 これからのライブでmachicoさんと翼が見せてくれるパフォーマンス。

 ミリシタ(多分)に実装される際のコミュ。

 そこでもまた素晴らしいものが観れるだろうことを、今から期待しておきたいと思います。

 

 

 ……まぁ自分、9thのday1は配信勢なんですがね。チャンチャン